VPNを狙ったサイバー攻撃が相次いでいます。警察庁によると、2026年上半期のランサムウェア被害報告件数は123件と半期として過去最多となりました。また、国内の不正アクセス等の被害公表は、2026年9月末までに600件。2025年の年間593件をすでに上回っています(トレンドマイクロ集計、共同通信報道)。
被害は情報漏えいだけでなく、業務停止や多額の復旧費用など、企業経営にも影響します。実際に起きた被害の事例は、こちらの記事で紹介しています。
関連記事: 「そのVPN、本当に安全ですか?実際のサイバー被害から考えるゼロトラストの必要性」
本記事では、警察庁が公表した令和8年上半期の最新データをもとに、ランサムウェア被害の現状とVPNを経由した侵入の実態を解説します。
ランサムウェア被害が示す現実
警察庁によると、2026年上半期のランサムウェア被害報告件数は123件でした。2025年上半期の116件、同年下半期の110件を上回り、半期の報告件数として過去最多です。近年の攻撃では、データを暗号化して身代金を要求するだけでなく、情報を窃取し、公開をほのめかして金銭を要求する「二重恐喝」なども確認されています。「大企業だけの問題」と思われがちですが、実際には被害123件のうち79件(約64%)が中小企業でした。
中小企業では、次のような課題が生じる場合があります。
- IT担当者が少なく、対策が遅れやすい
- VPNやリモートアクセス機器の管理が十分にできない
- 攻撃者から“入口が見えやすい”企業が多い
特に深刻なのが「侵入経路」です。
まず攻撃の全体像をつかみたい方は、こちらもおすすめです。
関連記事:「ランサムウェアとは?VPNの脆弱性を突いた攻撃とその対策を解説」
侵入経路の5割はVPN—— 警察庁が示す数字
では、攻撃者はどこからネットワークに侵入しているのでしょうか。

参考:「令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」
警察庁の令和8年上半期の調査にて、侵入経路について有効回答があった36件の内訳は次の通りです。
VPN機器:18件(50%)
リモートデスクトップ:9件(25%)
その他:9件(25%)
VPN機器とリモートデスクトップを合計すると27件、全体の75%です。つまり、侵入経路が把握された回答の4分の3で、外部からのリモートアクセスに関わる仕組みが侵入口となっていました。
前年同期のVPN機器の割合は62%でしたが、2026年上半期も50%と主要な侵入経路であることに変わりはありません。ただし、両年で有効回答数が異なるため、割合の低下だけをもってVPNの危険性が下がったと判断することはできません。
警察庁は、攻撃者が未修正の脆弱性や漏えいした認証情報等を悪用して侵入した後、管理者権限の奪取や内部探索を試み、データの窃取・暗号化へ進む典型的な手口を示しています。
問題は「VPNそのもの」ではなく、侵入後のアクセス構造
VPNは、社外から社内ネットワークへ安全に接続するために役立ってきた仕組みです。VPNを利用していること自体が、直ちに危険というわけではありません。一方、接続後に幅広いシステムへアクセスできる構成になっていると、ひとたび認証情報を悪用された際に、被害が複数のシステムへ広がる恐れがあります。VPNは通信を保護する技術ですが、業務上必要な範囲へのアクセス制限まで自動的に保証するものではありません。
見直すべきポイントは、
- VPN機器の更新漏れや脆弱性
- 使い回されたパスワード
- 多要素認証の不足
- 退職者・委託先のアカウント管理
- 過剰なアクセス権限
などです。
問われているのは、「VPNを残すか、なくすか」の二者択一ではありません。
外部からの接続口を把握し、侵入されても被害を広げにくいネットワーク構造になっているかどうかが問題なのです。
しかし、現在の働き方では次の問題が表面化しています。
VPN機器の脆弱性を突かれる
パスワード漏えい→不正ログイン
認証方式が古い(ID/パスワードだけ等)
接続後に必要以上のシステムへアクセスできてしまう
VPNは通信を保護する技術ですが、業務上必要な範囲へのアクセス制限まで自動的に保証するものではありません。
このような環境では、ひとたび侵入を許すと、被害が社内の複数のシステムへ広がる恐れがあります。
つまり、問題はVPNそのものではなく、侵入されても被害を広げにくいネットワーク構造になっているかどうかです。
必要なのは「脱VPN」ではなく“構造の再設計”
テレワークや外部接続が前提の現在、従来モデルの「社内に入る=全部に触れる」という構造では防御が成り立ちません。
そのため多くの企業では、「VPNを使うか使わないか」の議論ではなく、
ネットワークの設計思想を根本から見直す流れ
が加速しています。
その実現方法が、ゼロトラスト / SASE(Secure Access Service Edge)です。
必要な人が、必要なシステムへ、必要な範囲だけアクセスできる。
こうした環境づくりを支える選択肢がSASEです。ネットワークとセキュリティの機能を組み合わせ、場所にとらわれずアクセスを制御します。
VPNを一気に廃止する必要はありません。既存の仕組みを活かしながら、段階的に見直すこともできます。
“リモートアクセス前提の時代”だからこその必須対策
現在はどの企業もランサムウェアの標的になり得る時代です。
特に、攻撃者が最も狙うのは、
- VPN
- リモートデスクトップ
- パブリックに見えるリモートアクセス機器
という「入口部分」です。
だからこそ、VPN機器の適切な管理に加え、ゼロトラストの考え方に基づいたアクセス制御や、SASEを活用したネットワーク構造の見直しが重要です。これらは単なる最新トレンドではなく、現代の働き方に合わせたセキュリティ対策なのです。これは、大企業よりもIT担当者が少ない中小企業ほど重要です。
まとめ
本記事でお伝えしたかったポイントは3つです。
- ランサムウェア被害は半期として過去最多。中小企業も例外ではない。
- 侵入経路の75%はVPN機器・リモートデスクトップ(有効回答36件中)。
- 必要なのは「脱VPN」そのものではなく、ネットワーク構造の再設計。
働き方が変わった今こそ、自社の仕組みを見直す時期です。
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関連記事:「SASE(サシー)とは?概要から製品導入までわかりやすく解説」
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