コロナ禍を契機に、多くの企業でテレワークが普及しました。その結果、場所や時間を問わない働き方のメリットを実感する方も多いでしょう。しかしながら、デメリットも多くありました。その1つとして、VPNを使用していると、通信速度が遅くなってしまい、スムーズに業務ができないというものが挙げられます。今回は、VPNを利用時に、通信速度が遅くなる原因とその対処法について解説します。
VPNの仕組みについては、以下の記事をご覧ください。
「VPNの仕組みについてゼロから解説」
目次
VPNの通信速度が遅くなる原因は?
VPNの通信速度が遅くなる原因は大きく3つあります。それぞれ見ていきましょう。
1. 同じ回線を使用する人が多い
同時にVPN回線を利用する人が増えると、利用パケットも増加するため、VPNの通信速度が遅くなります。VPNは同時に利用できるパケットが決まっており、安定した通信には向いていません。
2. 同じページを見ている人が多い
同じサイトページを見ているユーザーが多い場合も、通信速度が低下します。ユーザーがサイトを閲覧しようとする際、サーバーはページのデータをユーザーに転送しています。そのため、アクセスが集中すると、サーバーの転送量が多くなり、通信速度が遅くなってしまうのです。
3. MTUの調整ができていない
MTUとはMaximum Transmission Unitの略であり、ネットワークが1回で送信できる最大のデータサイズのことを指します。各VPN回線は、MTUの値が設定されています。もし、送信したいデータ量が設定値を超えていた場合、MTUごとにデータを分割して、送信することになります。その結果、通信速度が遅くなってしまうのです。
以上で見てきた3つの原因の共通点として、「帯域を圧迫している」ことが挙げられます。
帯域を圧迫している原因とは?
ここでは、なぜ帯域を圧迫している状態が発生しているのかについて、ご説明します。
図1は、VPNを使用して、サービスを利用する際の通信状況を表しています。
この図からも分かる通り、帯域が圧迫される原因は3つの可能性があります。
1. ユーザー側の帯域が圧迫されている
例えば、マンションや一戸建てなどで、複数人が同じ設備を共用している状況で、よく発生します。これは、前述理由1の同じ回線を使用しているというところに該当します。この状況では、ユーザーが利用する全サービスに影響がある状況です。
2. サービス提供側の帯域が圧迫されている
サービスを提供する側の想定を上回る、ユーザーがサービスを利用している場合、発生する可能性があります。これは、前述理由2のアクセス集中に該当します。この状況では、サービス提供の遅延や提供不可といった状況を引き起こします。
3. 途中経路であるVPNの帯域が圧迫されている
ユーザー側でもサービス提供側でもない、途中経路であるVPNの帯域幅の問題によって、発生します。これは前述理由の1や3に該当するでしょう。
帯域を圧迫する状態をオンライン会議サービスで考える
テレワークへと移行する中で、オンライン会議ツールの利用機会が急増しました。Microsoft TeamsやZoom、WebExやGoogle Meetなど様々なツールがあります。これらの会議ツールをVPN回線とリモートデスクトップを利用するケースで考えてみましょう。図2は手元の動画を会議参加者に共有する場合のデータの流れを例示します。システム構成やサービスによっては、必ずしも例示のとおりになるとは限りませんが、データを扱うフローをイメージできると思います。
①手元のパソコンにある動画データ(例:カメラでの撮影や投影する資料の動画データ)を遠隔のパソコンに送信
②遠隔のパソコン内の動画データをサービスに送信
③オンライン会議サービス上で再生された動画データが遠隔のパソコンに送信される
④再生された動画データを遠隔のパソコンから手元のパソコンに送信
図2からも分かるように、同じ経路を2回重複して通ります。つまり、以上のケースでは、通常の環境で使用するよりも、2倍の帯域を必要としています。また、オンラインWeb会議の際には、複数の人が参加していたり、音声データを伝えたりするので、非常にデータ量の多い送受信を繰り返している環境です。そのため、帯域を圧迫しやすい状況になっています。
今回のケースでは、オンラインWeb会議サービスの利用を考えましたが、外部のクラウドサービスを利用する際にも、同じ状況が発生しています。そのため、頻繁に通信速度が遅くなる場合は、改善の検討が必要でしょう。
VPN使用で帯域を圧迫している状況での解決策とは?
以上で見てきたように、VPN利用によって、帯域を圧迫する機会が非常に増加しました。それに対する解決策について、ここでご説明します。
1. VPNの帯域を拡大させる
1つ目は、VPNの帯域を拡大させる方法です。ただ、設備を増強するには、初期投資、回線利用料の両方のコスト負担が大きくなります。VPNを使い続ける選択肢もありますが、セキュリティ面などの課題を考えると、今後切り替える必要があるでしょう。
VPNに関する課題については、以下の記事をご覧ください。
「VPNとは?〜概要や仕組み、メリットなどをわかりやすく解説〜」
2.リモートアクセスサービスを利用する
2つ目は、リモートアクセスサービスの利用に切り替える方法です。具体的には、ZTNA(Zero Trust Network Accessの略)などが挙げられます。単純に通信経路が最適化され、通信速度が早くなるだけでなく、スケーラビリティなど、VPNの他の課題を解決することもできます。
より具体的に、リモートアクセスサービスを比較する場合は、以下の記事をご覧ください。
リモートアクセスサービス比較【VPN・DaaS・ZTNA】
まとめ
今回の記事では、VPN利用時に通信速度が遅くなる原因と、その解決策について、ご説明しました。VPNの利用を継続するのも1つの手段ですが、慢性的に通信速度が遅くなる場合は、VPN以外のリモートアクセスサービスに切り替えることも検討した方が良いでしょう。
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