「またパスワードをリセットしなきゃ…」「認証アプリのコード入力が面倒」「SMS認証が届かない」
——日々の業務の中で、こうした“認証ストレス”を感じる方も多いのではないでしょうか。
従来のパスワード認証は一定のセキュリティ効果を発揮してきましたが、フィッシング詐欺や情報漏えいなどのリスクが年々増大し、もはや十分とは言えない状況です。
こうした課題を解決する新しい仕組みとして、近年注目を集めているのが 「パスキー(Passkey)」 です。
本記事では、パスキーの基本から導入のメリット、実際の導入ステップまでを体系的に解説します。
目次
パスキーとは
パスキーとは、従来のパスワード認証に代わる、パスワードを使わずに安全かつスムーズにログインできる新しい認証技術です。
指紋認証や顔認証といった生体認証、PINコードなどを利用してログインできるため、パスワードを覚えたり入力したりする手間がありません。現在では、GoogleやAppleといった大手企業も自社サービスやアプリへの導入を進めています。
パスキーの仕組み
パスキーの仕組みは、FIDO Alliance(ファイドアライアンス)が推進する国際的な標準技術に基づいています。

パスキーの仕組み (上図) を簡単に説明すると、以下のようになります。
- ログイン時、サーバーには「公開鍵」だけが保存される
- 実際の認証には、ユーザーのデバイス内にある「秘密鍵」が使用される
- 秘密鍵は外部に送信されず、端末内で生体認証(指紋・顔)やPINコードを使ってのみ利用できる
このため、サーバーから情報が漏れてもログイン情報が盗まれる心配がなく、 パスワードの使い回しやフィッシング攻撃といったリスクを根本的に排除できます。
企業がMFAからパスキーに「乗り換える」べき5つのメリット
メリット1:フィッシング詐欺に強い
フィッシング詐欺とは、実在する企業やサービスを装い、偽のウェブサイトに誘導してパスワード、クレジットカード番号などの個人情報を盗み出す詐欺です。
しかしパスキーを用いると、認証情報がデバイス外に出ることがないため、フィッシング詐欺耐性が極めて高いのが最大の特徴です。
メリット2:運用コスト・工数の削減
従来のMFAでは、「パスワードを忘れた」「認証コードが届かない」といった問い合わせが頻発し、 IT部門はパスワードリセット対応やMFA設定サポートに多くの時間を割いています。
パスキーを導入すれば、ユーザーはパスワードを覚える必要がなく、生体認証でログインできるため、リセット対応や再発行作業がほぼ不要になります。
また、MFA用のトークンデバイスや認証アプリの管理も不要になるため、 サポート工数・運用コストの両方を大幅に削減できます。
メリット3:ログイン時間を短縮し、業務効率を向上
従来のMFAでは、「IDとパスワードを入力 → 認証コードを確認 → 入力してログイン」という複数ステップが必要でした。
これがパスキーでは、指紋や顔認証で一瞬でログインが完了します。 システム利用の心理的ハードルが下がるため、 結果的に社内ツールやクラウドサービスの利用率アップや生産性向上にも効果的です。
メリット4:どの端末からでも、同じように安全にログインできる
パスキーは、Apple、Google、Microsoftといった主要プラットフォームがすでに採用しており、Windows・macOS・Android・iOSなど異なる環境でも共通の仕組みで使えるのが大きな強みです。
たとえば、社内ではWindows PC、外出先ではiPhoneやAndroidスマホを使うといったケースでも、同じパスキーを使って安全にログインできるため、ユーザーはデバイスを意識する必要がありません。
メリット5:監査・法規制対応の強化
パスキーは、FIDO2やWebAuthnといった国際標準規格に基づいて設計されており、
「パスワードレス認証」を実現する技術として高く評価されています。
これは単に利便性の話にとどまらず、
ISOやNISTなどのセキュリティ基準に適合しやすく、監査・法規制対応の強化にもつながります。
パスキー導入のための具体的な3ステップ
ステップ1:戦略策定と現状分析
最初に、パスキー導入の方針を定め、現状の認証環境を整理することが重要です。自社が抱える課題を明確にし、「どのシステムから導入を始めるのか」「どのユーザー層を対象とするのか」を検討します。
特に、社内のIT部門や利用部門へのヒアリングを通じて、日常的なログインの課題や運用上の制約を洗い出すことが重要です。
その上で、FIDO認証に対応したIDaaSや認証基盤を選定し、自社のシステム構成やセキュリティポリシーに適した技術を見極めましょう。
ステップ2:パイロット運用とシステム連携
次に、一部の部署やシステムでパイロット運用を実施します。
スモールスタートで課題を見つけ、ログイン体験やシステム連携の問題点を確認します。
並行して、Active Directoryや社内の業務システム、クラウドサービス(SaaS)との連携方法を確立することもポイントです。
パスキーは既存のID管理システムと連携できる場合が多く、既存環境を活かした形での導入が可能です。
ステップ3:全社展開とユーザー啓蒙
パイロット運用で得られた知見をもとに、いよいよ全社展開を進めます。
システムや部門ごとに段階的な移行スケジュールを立て、利用者への影響を最小限に抑えながら導入を進めることが理想です。
導入時は、社員が安心して利用できるように操作マニュアルやトレーニングを整備することが重要です。
まとめ
パスキーは、「パスワードをなくす」だけでなく、「認証そのものの仕組みを変える」技術です。
セキュリティ・利便性・コスト効率をすべて高い水準で両立できる、まさに次世代の認証基盤といえるでしょう。
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